「おまえが不幸なら、焼き殺された女奴隷たちは、もっと不幸じゃないか?ずっとたどってみるがいい。みんな不幸なのだ。この世に幸福な人間などありはしない!」 「みんな不幸・・・。なら、なんで人間はこの世にあるのだ?」 「木や草や、山や川がそこにあるように、人間もこの自然のなかにあるからには、ちゃんと意味があって生きているのだ。あらゆるものと繋がりをもって、その繋がりの中でおまえは大事な役目をしているのだよ」 「この俺がか?この俺に役目があるって?この役にもたたん俺が?」 「そうだ、もしおまえがこの世にいないならば、何かが狂ってしまう」 「あんたは不思議なことを言う・・・。俺はそんなこと、思ってもみなかった。じゃぁ俺は、これからどうやって生きていけばいい?」 「その川を見なさい。川は偉大だ。自然の流れのままにまかせて、何万年もずっと流れている。流れを早めようという欲もなければ、流れを変える力も出さない。すべて自然のままなのだ。しかも大きく美しい。そして・・・・よろこばれ、恵みを与えている。おまえも巨大だ。おまえの生き方次第で川のように偉大にもなれるだろうよ」 手塚治虫『ブッダ』から
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