風がジュンウォンの髪を激しく撫でていく。
 
  
数日前とは異なり、海は死んだように静かだった。
 

海を見下ろすことの出来る丘の上で、


ミョンヒョンはベンチに腰掛けて詩集を読んでいた。
 
 

「座ってもいいですか」


「ええ、もちろんお座り下さい」
 
 
 
ジュンウォンは、ひもでぶらさげてある

小さな水槽をミョンヒョンに渡した。
 
 
 
「キッシンググラミーという魚です。

この魚はつがいのうちの一匹が死ぬと、

もう一匹も死んでしまいます」


 
 
「寂しさに耐えきれず・・・

餌を食べないでわざと飢え死にしたり。

おなかに水をいっぱいにためて

死んでしまったり・・・」
 

 
ミョンヒョンがジュンウォンの言葉をつないだ。


 
「・・・・?」


 
「驚かなくてもいいわ。

お姉さんはお魚博士だったでしょ。

だからわたしも・・・」

 

 
何かを言いかけてミョンヒョンはふふっと笑った。
 

 
「お姉さんの悪口を言っていい?」
 



「・・・・」



「病院に泊まりにきたの。何度も・・・

お姉さんの寝相の悪さと言ったら・・・


朝になるといつもベッドから落っこちてるのよ。


それに、箸を使うのがヘタでいつ食べ物がとんでくるか

わからなかったんですもの」




ミョンヒョンはヘッドフォンをジュンウォンに手渡した。
 
 
 
「この歌をご存じ?

お姉さんが好きだった歌なの」

 



When I dream, I dream of you
Maybe someday you will come true

When I dream, I dream of you
Maybe someday you will come true



夢を見れば・・・

あなたの夢を見れば


いつかきっと

わたしの願いがかなう・・・

 






ジュンウォンは視線を遠くの水平線に向けた。



波に砕ける金色の陽の色が

目を差したように、
 
頬をつたって涙がこぼれ落ちた。
   



ジュンウォンはヘッドフォンをはずして

向こうにある電話ボックスに歩いていった。

 
ボケベルの番号を押した。
 
しばらくして電話の向こうから、ミョンヒョンの涙声が聞こえてきた。
 





ジュンウォンさん、わたしミョンヒョン。

いま競技場の前。


CTXはロイヤルボックスの上のドームライトの中にあるわ・・

地下の変電室からライトを点けることになっているの。


そして、わたしは・・・

競技場の西側のスタンド、中央にいるわ。




はるかな沖合で、

カモメが自殺でもするかのように
 
急降下するのが目に入った。

 
ジュンウォンの濡れた胸が彼女の名を呼び続ける。

 



ジュンウォンさん、お願いがあるの。

わたしの前に現れないで。

お願いだから、他の人をよこして・・・
 
 
 
あなたと一緒に過ごしたこの一年、それがわたしの人生の全てだった・・・


 


その瞬間だけは、
 
イミョンヒョンでもイバンヒでもなく
 
わたし自身だった。
 
 

わかって欲しいなんていわない。
 

ジュンウォンさん、会いたい。
 
本当に会いたいの・・・
 



 
ジュンウォンが膝から崩れ落ちた。
 
膝にうずめた肩が震える。
  
呻きのような泣き声が静かに聞こえてきた。

 
 
本当に・・・・会いたい・・・

 
 
 ミョンヒョンの震える声が、
 
ジュンウォンの胸をこじ開け、その中でこだました。






                   


I could build the mansion that is higher than the trees

I could have all the gifts I want and never ask please

I could fly to Paris. It's at my beck and call,

Why do I live my life alone with nothing at all


When I dream, I dream of you,
Maybe someday you will come true.
When I dream, I dream of you
Maybe someday you will come true




夢を見れば・・・

あなたの夢を見れば


いつかきっと

わたしの願いがかなう・・・

 





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