「人は死んだらどうなるのかな。 天国ってあるのかな」
「わたしはね、今あるものの中に、みんなあると思うの。
今、ここにないものは、死んでからもやっぱりないと思うの。
今あるものだけが、死んでからもあり続けるんだと思うわ。
うまく言えないけど」
***
「人生には、実現することと、しないことがある。
人生の美しさというものは、
かなわなかったことに対する思いによって
担われているんじゃないだろうか。
実現しなかったことは、
ただ虚しく実現しなかったわけではない。
美しさとして、本当はすでに実現しているんだよ」
***
体育館
テープのアキの声がヘッドフォンの中で響く
「体育館って好きよ。
高い天井。大きな窓から落ちた日差し。
ワックスを敷いた板張りの床。
きゅっきゅっきゅっと靴音が響くの・・・
今日の日は さようなら また会う日まで
この歌、好き」
***
舞台の上で幻のアキがピアノを弾いている
彼女のとつとつと弾く調べが、
時空を越えて、
朔太郎の心に響いてくる。
その曲はグノーの「アヴェ・マリア」である。
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