僕はいまから八年程前に長女を亡くしました。
彼女は生まれたときから重い障害をもった子供で、十八年間の人生の中で一度も自分の力でベッドから起き上がることが出来ない生活を送り、そして死にました。
生まれてすぐからミルクが巧く飲めず、いつまでたっても首が据わらないままで、やがて視力が、そして聴力が失われ、身体の発育も健常児に較べればずっと悪く、四肢の関節は曲がり、自分の手で食事を摂ることも出来ないままで生涯を終えました。
最後の七年間は親戚の経営する病院に入院し、僕自身は仕事が忙しかったせいもあって、月に三、四度病院に見舞いに行くのが精一杯、という状態で良い父親とはいえなかったかもしれません。
それでも見舞いにいったときに天気がいいと、僕は娘を抱いて窓際に連れて行き、太陽の光を浴びさせてやることにしていました。
すると、視力のないはずの彼女が、光を感じ取ってさも嬉しそうにニッコリと笑うのです。目は見えなくとも光を感じ取る事はできるのです。
それは父親である私にとっても至福の時間でした。
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