■ブラックジャック「めぐり会い」 ブラックジャックでも人を愛した事が一度だけある。その相手は、大学の医局の後輩、「如月恵（きさらぎめぐみ）」。やさしく聡明な女性だ。 ブラックジャックは、医局でも、まったくの孤独だった。 しかし、如月恵はブラックジャックのやさしい素顔を知り、急速に惹かれていく。そんな彼女に対して、彼は冷たい態度で接し続ける。　 やがて、如月恵に思わぬ不幸が訪れる。子宮癌に侵されてしまったのだ。彼女の命を救うには、子宮や卵巣など、女性にとって心身ともに大切な器官をすべて切除しなければならなかった。　 その時、ブラックジャックはその手術の執刀を名乗り出る。それも一人でオペをするという。天才的技術を持つブラックジャックの強烈な主張と脅しで、この特例が認められた。 手術室には、ブラックジャックとベッドに横たわる恵の二人。ブラックジャックは初めて彼女に自分の正直な気持ちを伝える。 「きみが女であるあいだにいっておこう。めぐみさん、きみが好きだ。心から愛している」　 思わぬ告白に涙を流して喜ぶ恵。如月恵は、哀願する。　 「先生、キスして！おねがい」 キスを交わす二人。だが、手術が成功したら、恵はもういままでとは違う自分になってしまう。完全な女性ではなくなってしまうのだ。当たり前だと思っていた生理がなくなり、子供を生むことが出来なくなってしまう。もうこれで自分の中で女性という存在が無くなってしまう気がした。 「これきりなのね・・・・手術が終わったら、この気持ちもかき消えてしまうのね・・・」 ブラックジャックは、こうささやく。 「いや、そうじゃない。この瞬間は、永遠なんだ」

　

B

ブラックジャック 新装版 全17巻 秋田書店 Amazon.co.jp で詳細を見る

ブラック・ジャック（5） (手塚治虫文庫全集 BT 62)
「めぐり会い」「人面瘡」「にいちゃんをかえせ!!」「白いライオン」「アリの足」・・・
読んでいるうちに思わず涙が出てくる。命の大切さや、医者とは何なのかということを訴えかけてくる一冊