見城徹、トムクルーズ、自殺





FE:いま出版界のなかで、見城徹ほどパワフルで敵なしの男はいないと言わ
れていますが…。

見城「僕は、人一倍不安や恐怖を感じるタイプなんですよ。しょっちゅう後ろ髪を引かれているし、小石にもつまづく。何をやるにもウジウジ悩んだりクヨクヨする男なんです。

7、8年前にトム・クルーズの仕事や私生活に密着して書かれた記事を雑誌で読んだことがあるんだけど、彼はいつもちょっとしたことでたじろぐんだそうです。


例えば明日ベッドシーンがある。ものすごく憂欝で落ち込む。ロケ現場でもずっと無口で。でもいよいよ本番の時間が近づいてくると自分を吹っ切ったように、『ロッケンローーール!』と叫んで現場に入っていくんだって。


その気持ちがすごくよくわかるんだよね。以来、僕も一歩踏み出すときにはいつも心の中て『ロッケンローーール!』って叫んでますよ(笑)」



FE:幻冬舎という会社を作って以来、史上最速でミリオンセラーを連発したり、12億円を叩いて62作の文庫本を送り出したり、郷ひろみの『ダディ』を常識外の初版50万部からスタートしたり……。どうして見城さんは毎回壁を突破できるんですか?

見城「そうしなければ何も始まらないと思うからじゃないかな。人は現状維持が一番楽なんですよ。でもそれでいたら満たされない自分がいる。寂しい自分がいるんですよ。だから、苦しくても、一歩前へ出る」





FE:『大河の一滴』が文庫・単行本あわせて300万部を突破した理由は?

見城「人は必ず病気になるし、生まれたからには必ず老いる。肉親だろうと友人だろうと人は裏切る…。仕事は上手く行かない、恋は成就しない。それを前提として生き始めようじゃないかというのが『大河の一滴』の根本に流れているものなんです。

黙々と生きて黙々と死んでいった人たちはみな、それを静かに受け入れるんです。僕にとって尊敬すべき人たちというのは、そういう人たちなんですよ。人生の価値というのは、総理大臣だろうと田舎で黙々と生きた人だろうとみな同じだと思うんですよね。

最終的に人はひとりで死んでいく。それはすべての人間に対して平等じゃないですか。その時、笑って死ねるかどうか。それ以外は全部プロセスに過ぎない。自分の人生が成功か失敗か、死ぬ瞬間、自分自身が決めるわけです。その瞬間のために僕は今、戦っている」


FE:なぜそんなに寂しいんですか?

見城「だって人は必ず死ぬんだよ! もし死なないのなら、すべての問題は解決しちゃう。フラれたって全然寂しくないと思わない?1億年後には必ず恋は成就するだろう、一人くらいは(笑)。

時間の秘密というのはものすごく大きなことで、ものの哀れもせつなさも、感動はすべてそこから生まれてくる。時が経つことは誰も止められない。生病老死だよね。それを受け入れられるかどうかなんだけど、僕はダメなんですよ。生きている瞬間瞬間で自分を満たしてやらないと…。

哲学者や宗教家がいろんな生き甲斐を説くけれど、本当の生き甲斐なんてないんですよ。でもそれがないなんて言ってしまえばおしまいだから、一生懸命自分の中でその場その場の生き道を求める。宗教にきちんと入り込んで神と直結すれば、生涯寂しさを感じなくていいのかもしれないけど…」

FE:なぜ、そこにハマらないんですか?

見城「いろんな宗教を見たし、旧約聖書も新約聖書も全部読んだし、法華経も勉強したけど…そこに自分を埋められない。それよりもこれだと思った女を勝ち得てセックスするときのほうが埋められるんですよ(笑)。それも瞬間的だけどね(笑)。」


FE:若い頃からそんなに寂しいんですか?

見城「ずっと寂しい」


FE:周りに愛がなかったんですか?

見城「いや、そうじゃなくて、人間はつねに死に向かって生きているわけじゃない? 結局死ぬために生きている。それ以外は全てがごまかしですよ。何をやったって死という圧倒的な事実に向かっているわけで。

それを回避できるならいいよ。回避できないからすべては一時的なごまかしでしょ。だから根本的に寂しいわけです。愛があろうと仕事がうまくいこうと。だから僕にとっては、死をどのように受容するかが最大の問題なんです」






FE:「自殺」は見城さんにとってどういう位置付けになるんでしょうか?

見城「自殺できれば一番いいと思っている。でも今はまだ自分で自分の命を絶つことはできない。何度もそうしようと思うのね。ただその勇気がないだけなんだよ」

FE:見城さんが自殺すると、残された幻冬舎の方々が大変しゃないですか。

見城「そんなことは知ったこっちゃないよ(笑)。僕は僕のために会社をやっているわけで、彼らは彼らのためにこの会社にいるわけで、僕が死んだら誰かが何とかするかもしれないし、離れていくかもしれない。家族はいるとしても、それぞれの人生のなかで今ここを選び取っているだけでしょう。

だから僕は『辞める』というヤツは絶対に止めない。ものすごいエゴイストだから、この会社も見城徹という生き様の形だと思っているんです。僕の、のっぴきならない人生を生きるためにこういう会社になってしまったんです。

アンドレ・マルローの『王道』の中でテロリストの陳が死ぬ直前に放った台詞がカッコいいんだけどね…『死、死などない。俺だけが死んでいく』…まさにその通りで、俺だけが死んでいくんですよ。自分にとっては死でも、他の人にとっては死なんてないんです」


FE:なるほど。

見城「だから僕は、幻冬舎をやっていなかったら今ごろ飛行機の操縦席に座ってビルに突っ込んでいたかもしれない。

アラブ人の彼も、もしかしたら微笑みながら突っ込んだのかもしれない。それも彼自身の生き様なんだからいいじゃないかと思うよね。それは共同体の善悪や正義や真実なんていう、浮わついた言葉ではくくれないものでしょう。死ぬ理由が見つかれば僕は死にますよ。

ヘミングウェイが自分を撃った、三島由紀夫が腹を捌いた、奥平岡士が自分の足に爆弾を投げだというのは、だから僕にとって重いんです。60年安保のときに全学連が国会に突入して樺美智子という東大生が死んだ事件があったんだけど、その後彼女の日記が発見されて『人知れず微笑まん』という本になってね。

その本は、『最後に笑うものが一番良く笑うという。私も最後には人知れず微笑みたいものだ』という詩の1行で終わるんです。彼女は早過ぎる死の瞬間、笑えただけだろうかって考えるんです。

ホームレスでも大統領でもテロリストでも、みんな対等の人生を生きている。僕は最後に微笑んで死ぬためにダッシュしている。だから、すべての議論や人生論はどうでもいいことなんです」





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