生きていてよかった




19 名前:自殺志願:03/05/01
もうだめだ、心身共に疲れ果てた、もう楽になりたいって、俺、数年前、死のうと思ったことあったんだよ。
毎日、会社行ったらクライアントが来て職場の椅子に座ってんのね。向かいの席の先輩が客先に人質になってて、俺の仕事が終わるまで、報告用の書類作ってんの。
その状態が半年。そう半年。 職場の上司もそのお客さんには頭が上がらない。フォローもしてくんない。職場は禁煙でそのお客さんは喫煙者だから、しょっちゅう喫煙室に行くわけよ。で、帰ってきたらまた不機嫌そうに向かいの席でわざと視線合わさないでプレッシャーかけてくんの。

息抜きもできない状態で休日も1日も無い状態で、さすがに精神が参っちゃって、ある日朝家を出て、駅まで歩く途中で突然、 そうホント突然、死のうと考えたわけよ。

49 名前:自殺志願 投稿日:03/05/01
でね、職場は千葉の柏だったんだけど、なぜか俺神奈川の関内に行ったわけよ。

何で関内かっつーと、今まで一番好きだった子と学生時代によくデートした町なんだ。そこから1日中歩いた。風が強い秋の日だったよ。知らない間に猛暑の夏も終わってて、そんな事も気付かずに半年も働き詰めたのに初めて気付いて、それもショックだった。

その子とも別れて1年、新しい彼女ができるでもなく、そういう感覚も忘れてた。そんな事を考えながらふらふら桜木町まで歩いて、名物のガード下の落書き眺めながら横浜まで歩いて、一緒によく朝まで過ごしたファミレスの近くまで歩いた。

もう夕方になってた。そのファミレスの前に大きな歩道橋が掛かってて、 下には車がぶんぶん通ってる。
でね、ここだ!って決めたわけよ。

でも不思議な事にそういう時ってなぜか人目を気にしちゃうんだよね。 歩道橋を通る人がなかなか途切れてくれなくて、踏み出せないのよ。
ずぅ〜っと待ってて、やっと途切れて、今だ!って手すりに乗り出そうとした瞬間、そのファミレスの店員さんと目が合っちゃったんだ。 店員さんは凍りついた感じでこっち見てた。
何故か俺走って逃げちゃったんだよね。

50 名前:自殺志願. 投稿日:03/05/01
で、またふらふら歩いてそのまま何故か伊勢崎町。横浜の人なら地理解ると思うけど、一日かけて関内〜横浜を往復しちゃってたの。 それでずーっと歩いて京急日の出町の駅まで来ちゃった。そこは俺がその子に告白した場所だったんだ。

その瞬間、その日一日デートコースを一人で歩きながら一度も思い出せなかったその子の顔や表情、しぐさ、声を急にはっきりと思い出しちゃって、一人で泣いちゃったんだ。
あの頃は輝いてたのに。俺今何やってんだろう、って。

ひとしきり泣いて、泣きつかれて、そのまま藤沢の実家に帰ったよ。実家に着いたのはもう深夜。俺が帰ったらお袋が泣きながら俺に抱きついてきた。
会社から電話が掛かってきてたらしい。朝寮を出て出社してない、彼の勤務が最近厳しかったので疲れているんじゃないか、会社としても非常に心配している、何かあったすぐに連絡して欲しい、との事だった。

警察からも連絡があったらしい。
関内の駅で捨てた鞄が警察に届けられてて、中の携帯から実家に連絡が行っていたそうだ。親父が受け取ってきたその携帯には上司や先輩や同僚や後輩からバカみたいに沢山着信が入ってた。

普段口うるさい親父が一言、「よく生きて帰って来た、今日は安め」 って言ってくれたのを憶えている。

51 名前:自殺志願. 投稿日:03/05/01
結局死ななかったけど、その夜は眠れなかった。
一晩じゅう「俺の幸せってなんだろう?」って自問自答してた。

翌日昼から出社して、上司に全部話した。
上司も何も文句を言わなかった。
結局その案件は先輩が引き継いでくれた。
クライアントはもう来なくなってた。担当も替わってた。
引き継いだ後、1週間休みを貰った。

1週間、横浜の大桟橋の脇の船着場の浮き桟橋で波に揺られて毎日ぼぉ〜っとした。「俺の幸せってなんだろう?」って。

俺はやっぱりコンピュータが好きだ。
プログラミングが好きだ。
誰かとその事で議論するのも好きだ。
後輩に教えるのも好きだし、先輩から昔の話を聞くのも好きだ。お客さんがすっげえ喜んでくれるのも好きだ。

でね、1週間の長い休みが明けて会社に行って、上司に「やっぱりこの仕事が好きなので続けます」って言ったら喜んでくれた。こんな事があって、絶対辞めると思ってたらしい。

それから、適当に息を抜く技を身に付けた。
お客さんのアオリのかわし方もうまくなった(と思う)。


52 名前:自殺志願. 投稿日:03/05/01
それから数年。
今のカミさんには話した事無いけど、
カミさんとその脇で寝ているガキの顔を見て
つくづくあの時死ななくて良かったと思う。
だから死にたくなった人がいるならもうちょっと待ってみろ、って俺はいいたい。生きていて、そのさきに、やっぱ死ななくて良かったって思える日が来るんだって、教えてあげたいんだよ。

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