いじめの構図


ここ五年余り、中学生を対象に「いじめ」を自分の研究テーマの一つにして、調査を続けている。

いきおい現実のトラブルに、介入することも少なくない。そうした際、問題の解決の大きな支障となるのが「いじめられやすい人間というのが世間には存在する」という固定観念である。

例えば、いわゆる「優等生」。

勉強はできるし、弁も立つ。けれども運動は、超苦手というタイプ。「肥満児」もそれと並ぶ存在で、「いじめは、する方が悪いのは当然としても、いじめられる方にも相応の理由があるのでは」という声が挙がるたび、話がややこしくなってしまう。


だが、実際に中学生たちを調べてみたところ、被害者になりやすい属性など、ないことがわかった。

加害者の立場を正当化する方便にすぎず、どんな人間でもいつ何時、攻撃の的になるか予測がつかないのが実態なのだ。こう考えてくると、田中氏と県議会との間の“いじめの構図”も、関係がこじれたのはお互いに非があるはずなのに、争点をぼかしているだけに過ぎないようにも思えてくる。


動物界では、けんかのパターンが「タカ型」と「ハト型」に二分することが知られている。

前者は普段から争いが絶えないので、一回ごとの勝ち負けが、すぐ決まり後をひかない。闘争にもルールが確立している。

他方、一見すると平和主義者の後者は日ごろ、闘い慣れしていないものだから、いったん始まると手段を選ばずエスカレートする。結果として、双方とも回復不能になるまで傷つくことも珍しくない。あげくのはてに、漁夫の利を狙う第三者が出現し、事態はますます泥沼化する。



(京都大学霊長類研究所 助教授・行動学  正高 信男)


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