「二週間くらい前から、徐々に気配を感じるようにはなっていたんです。電話の向こうの彼の口調がそれまでより丁寧になってきて、わたしの話を聞いても、面白がったり笑ったりしてくれなくなったんです」
そんなことを話しながら、Kさんはガックリとうなだれました。
恋人同士の関係は、他愛ない話で盛り上がれなくなったら、次の段階に入ったということ。それは一種の倦怠期ともいえるし、転換期ともいえます。
Kさんの彼は、それから二週間後、一方的に別れ話をし、そのまま北海道への長期出張に行ってしまいました。
こんなとき、あなたなら、どうしますか。
あなたが内向的な頑張り屋さんなら、自分の受けたショックを抑えよう、抑えようとします。あなたが外交的な頑張り屋さんなら、彼を問い詰めようとしたり、さらに北海道まで追いかけていくかもしれません。
この二つの行動は間違っているのかと、問われれば「そんなことしたらダメ」とはとても言えません。なにをすべきかハッキリした答えがあるわけない、というのがわたしの本音です。
ただ一つ言えるのは、泣きたい気持ちがあったなら、我慢しないこと。
泣くと言う行為は、人間に与えられた機能の中でも、とても大切なものの一つです。もう泣けないというところまで泣くと、どんなに感情が高ぶっていた人も、ある種の清々(すがすが)しさを味わうことが出来ます。
そして、しばらくして落ち着いたら、悲しい涙だったのか、悔しい涙だったのかが自然にわかります。
それが悲しい涙だったのなら、少し自分を甘やかしてあげましょう。ずっと欲しかったけれど、迷っていた品物、例えばシルクのルームシューズやジノリのティーカップとか、部屋でクヨクヨするときに、なぐさめ物になる上等で優しいものを買いましょう。
悔し涙だった人は、何かで自分を強くできるものを手に入れましょう。今までよりちょっと大人のヘアスタイル。今まで憧れていたけれど、彼の好みではなかったロング丈のタイトスカートなど。
そう。悲しい人は、美しき悲劇のヒロインをとことん味わい、悔しい人は彼の好みに縛られなくてすむ、いい女になってみる・・・。失恋の一つや二つ経験していないと、本命は登場してくれないことになっているのです。
中山庸子「勇気がもてる50の方法」 から |