172 :大人の名無しさん :03/12/01 ボジョレーの季節でしょ。 でも僕は下戸なんで、イマイチわからんけど。 いまいち仲が良くなかった父が入院する前夜、 まあいつまで入院するかわからないけど 一応、別れの杯だ、なんて冗談めかして言ったんだ。 こんなの初めてのこと。 ワインが大好きだった父は、とっておいたビンテージ?を 開けて僕と自分につぎわけ、乾杯した。 母も珍しいこともあるもんだと言って、 これまた珍しく家の中で写真をとった。 父と初めて対座して酒を酌み交わすってのが なんとも居心地が微妙なもので。 かといって 下戸なのですぐに酔ってしまい、 父はカラカラと、これじゃあ酒でまだお前に負けることはないなと 笑っていた。 それで入院。 末期の食道癌で家に帰ることなく闘病4ヶ月であっけなく逝った。 最初で最後の父と息子の晩酌だった。 父の遺品を整理していると、ワインが納屋からまだいくつか出てきた。 僕は銘柄の良し悪しは良く分からないが、ラベルを見てみると、 何か文字がメモしてあった。 「××(僕の名)大学卒業用」 「××就職時用」 「××結婚時用」 瓶を抱いて僕はずっと泣いてしまった。 ワインをあける機会を奪った病気を恨んだ。 それ以来下戸ながら、月の命日には赤ワインを開けて、 父を思い出すようにしている。 僕はもう結婚まですませ子供もできたが、 父の残したボトルは空けてない。 もっと酒を教えてもらえばよかったと、本当に思う。
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