<100万回生きた猫>

死んでは生き返ってを繰り返し、100万回もの生を受けた猫がいました。猫にはいつも飼い主がいました・・・その数100万人。

皆、猫が死ぬとワンワンと嘆き悲しみましたが、猫自身は一度も泣いたことがありませんでした。

ところが、この猫に見向きもしないものがいました。それは美しい白い猫でした。猫は腹を立てました。そして毎日毎日、白猫に「俺はすごいんだぜ、なんてったって100万回も生きたんだから」と、自慢話をしに行きました。

白猫は気のない相づちを打つばかりでした。今日も猫は「俺はすごいんだぜ」と言いかけて、途中でやめました。

そして「そばにいてもいいかい?」と尋ねました。白猫は「ええ」とだけ言いました。

2匹は常に寄り添うようになり、一緒にいることがなによりも大切に感じるようになりました。

それからかわいい子猫がたくさん生まれ、猫はもう得意の台詞、「俺はすごいんだぜ」を言わなくなりました。いつのまにか自分よりも、白猫や子猫たちのことを大切に思うようになっていました。

やがて子猫達は巣立って行き、白猫は少しお婆さんになりました。猫は、白猫と一緒にいつまでも生きていたいと思いました。

ある日、白猫は猫の隣で、静かに動かなくなっていました。

猫は白猫の亡骸を抱いて、生まれて初めて泣きました。
100万回泣きました。そしてぴたりと泣きやみました。

猫は、白猫の隣で静かに動かなくなっていました。
それから猫は、もう決して生き返りませんでした。







100万回生きたねこ
100万回生きたねこ
posted with amazlet on 05.10.27
佐野 洋子
講談社 (1977/01)
売り上げランキング: 2,524
おすすめ度の平均: 4.73
5 店頭で手にしたその場で泣きました
5 うむむ
5 これまでの人生の中で一番感動した本。







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